喉の違和感について
『のどが腫れている』『のどに何か引っかかる感じがする』『のどがイガイガする、ざらざらする』『飲み込みにくい』などのご症状のことを、咽喉頭異常感と言います。
このような、喉の違和感・異物感・詰まった感じなどがある場合、さまざまな病気が関わっています。咽喉頭炎(喉の風邪)、逆流性食道炎、甲状腺疾患、またストレスからの自律神経失調症・抑うつなどでもよくみられます。まれですが、喉頭がんや咽頭がんなどの悪性腫瘍のこともあります。
喉の違和感がある場合、多くの方はまず耳鼻咽喉科を受診されます。耳鼻咽喉科で異常はないことを確認してから、当院のような甲状腺のクリニックをご紹介され、受診されるケースが多いです。
慢性的に喉の詰まりや引っかかりがあり、咽頭や食道に異常がない場合、甲状腺の異常の可能性があります。気になる方はご予約ください。
喉の違和感から考えられる疾患
甲状腺疾患
バセドウ病
甲状腺ホルモンが過剰に作られる病気です。甲状腺ホルモンは、全身の代謝に関わる重要なホルモンですが、過剰になると全身の臓器へ負担がかかり、さまざまな症状があらわれます。
よく現れる症状としては、どうき、体重減少、指の震え、暑がり、イライラ感、不眠などです。発症の原因はまだはっきりしていませんが、何らかのウイルス感染や強いストレス・妊娠・出産などをきっかけとして起こるのではないかと考えられています。
若い女性に多い病気で、特に20-50歳の女性に多く発症します。治療は主に薬物療法で、速やかに落ち着く方が多いですが、定期的なフォローアップが必要です。難治性の場合、まれに手術が必要になることもあります。
橋本病(慢性甲状腺炎)
橋本病は、甲状腺に慢性の炎症が起きている病気です。20歳代後半以降、特に30~40歳代の女性に多く発症します。原因は自己免疫異常ですが、なぜ自己免疫を起こすのかは明らかになっていません。
橋本病が進行すると、甲状腺ホルモンの分泌が徐々に下がり、甲状腺機能低下症を引き起こすことがあります(患者さんの20%程度)。その場合、全身の代謝が低下するため、喉の違和感に加えて、無気力、疲れやすさ、全身のむくみ、寒がり、体重増加、便秘などが生じます。白髪が一気に増えることもあります。治療は甲状腺ホルモンの内服となります。
亜急性甲状腺炎
甲状腺に強い炎症がおき、甲状腺組織が壊れる病気です。発熱と、痛みを伴う甲状腺の腫れが特徴です。甲状腺組織内に貯留されていた甲状腺ホルモンが一気に血中に流れ出るため、バセドウ病と同様、動悸や指の震え、多汗などが起きます。
原因はウィルス感染と考えられています。治療はステロイドや抗炎症剤の内服ですが、症状が強い方は入院して点滴治療が必要になることもあります。
症状は激しいですが、数か月で自然に改善していきます。まれに、まれに甲状腺機能低下症が残る方もいます。また、再燃しやすいため、薬の自己中断は注意が必要です。
甲状腺腫瘍(甲状腺のしこり)
甲状腺のしこりには、良性腫瘍と、悪性腫瘍があります。一部を除いて、初期にほとんど症状はなく、ゆびで触れてしこりに気づいたり、首を前屈した際の違和感などを感じる程度です。健診などで、医師の触診により甲状腺にしこりを発見する確率は1%前後ですが、超音波検査を行うと10-30%の方に、何らかの腫瘍が見つかると言われています(その1-3%が悪性腫瘍)。
良性腫瘍で症状を伴わない場合、治療は必要ありません。ただ、あまりに大きくなったり、圧迫感が強い場合、悪性腫瘍が疑われる場合などは手術に進みます。最初に良性腫瘍であっても、経過観察をしているうちに、悪性になることがありますので、定期的なフォローアップが必要です。
※超音波検査の予約は5月から開始となります。
喉の疾患
咽頭炎
ウイルスや細菌などにより、咽頭に炎症をきたした状態です。発熱や鼻水など、上気道炎の症状の一部として起こることが多いです。喉の奥が赤く見えることがあります。
扁桃炎
のどの奥の両脇にある扁桃に、ウイルスや細菌などが感染し、炎症を起こした状態です。扁桃は赤く腫れ、白い斑点が見えることもあります(膿のかたまりです)。つばを飲み込むと強い痛みがあり、高熱を出すこともあります。扁桃炎は、過労やストレス、寒さなどで体の免疫力が下がった時に発症しやすく、注意が必要です。
喉頭炎
喉頭は、咽頭の下部で、気管と咽頭の間に位置します。喉頭には喉頭蓋というふたがあり、これが動くことにより、空気は気管へ、飲食物は食道へと振り分けられます。また、喉頭には声門があります。喉頭に炎症が起きると、声のかれ・咳・痛み・発熱などが起こります。喉頭蓋に炎症が起こると、空気の通り道が急に狭くなり、窒息することもあるため注意が必要です。のどの痛みが激しく、息苦しさまで感じたら、すぐ耳鼻科を受診しましょう。
逆流性食道炎
自律神経失調症・抑うつ
ストレスにより自律神経が乱れると、喉の詰まりや違和感、圧迫感を感じることがあります。これは、交感神経の過緊張により、食道周囲の筋肉が過剰に収縮することで起こると言われています。喉に球が詰まったような感覚が続き、調べても器質的な異常が出てこないことが特徴で、ヒステリー球ともよばれます。
治療は、ストレスの原因を取り除くことが何より重要です。とはいえ、環境をすぐに変えられない方も多いため、その間は軽い抗不安薬や漢方薬が著効することがよくあります。お悩みの方は、まずはご相談ください。
当院で実施する検査・治療
問診でご症状をおうかがいしながら、触診、採血、甲状腺ホルモン検査、甲状腺エコー検査などを組み合わせながら、検査をすすめていきます。自律神経失調症や不眠症などを合併されている方は、合わせてそちらも治療をさせていただきます。
逆流性食道炎や咽頭喉頭のご病気を疑う場合は、消化器内科や耳鼻科へご紹介させていただくこともあります。