睡眠時無呼吸症候群とは
睡眠時無呼吸症候群(SAS:Sleep Apnea Syndrome)とは、ねむっている間に何度も息が止まってしまうことで、体の中の酸素が足りなくなり、さまざまな合併症を起こす病気です。いびき、夜間の頻尿、夜中に何度も目が覚める、朝起きた時の頭痛、昼間の眠気など、さまざまな症状を引き起こし、日常生活の質を下げてしまいます。 日中の眠気と集中力の低下で、居眠り事故が増えることは有名です。 また、治療をせずに放置していると、低酸素状態を繰り返し、血管内皮にダメージが蓄積し、高血圧、心筋梗塞、脳梗塞などの発症率が2~5倍上がることが分かっています。
睡眠時無呼吸症候群の定義は、以下の通りです。
- 10秒以上の無呼吸(息が止まること)が、一晩(約7時間)に30回以上起こる
- 無呼吸や低呼吸(息が浅くなること)が1時間に5回以上起こる
原因は、睡眠中に、空気の通り道である上気道がふさがることです。 成人男性の約3~7%、女性の約2~5%にみられます。男性は40歳代から徐々に増加し、女性は閉経する50歳以降に増加します。
糖尿病や高血圧、脂質異常症を合併した患者さんは、もともと動脈硬化の進行が速いことが知られています(コラム:死の四重奏)。ここにSASが合併すると、心筋梗塞や脳梗塞のリスクがさらに高くなってしまうため、決して放置してはいけません。
睡眠時無呼吸症候群の
主な症状
寝ている時
- いびきをかいている
- 呼吸が止まっている
- いびきをかき、呼吸が止まった後、大きな音を立てて呼吸が再開する
- 夜に何度も目が覚める、何度もトイレに行く
- 呼吸が乱れる、息苦しさを感じる
- むせる
朝起きた時
- 頭が痛い
- 熟睡した感じがしない
- 体がだるい、重く感じる
- 口の中が乾いてしまっている
日中
- 我慢できない眠気があり、うとうとしてしまう
- 体がだるい
- 集中できない
- 疲れが溜まっている
- 居眠り運転をしたことがある
睡眠時無呼吸症候群に
なりやすい方
もっともよくある原因は、肥満です。体重の増加により、首周りの脂肪の沈着が増えることで、上気道が狭くなりやすくなります。また、他の原因としては、扁桃が大きい・舌が大きい・慢性的な鼻炎がある・あごが小さい、などがあげられます。
睡眠時無呼吸症候群の
診断・検査
診断について
日中の眠気を診断するための簡易テストです。
ご自分の普段の生活を思いうかべて、チェックしてみましょう。
~数字の度合い~
0:決して眠くならない。
1:時々、居眠りしてしまう。
2:居眠りすることがよくある。
3:だいたいいつも居眠りしてしまう。
状況 | 点数 | |||
---|---|---|---|---|
0 | 1 | 2 | 3 | |
1:座って読書している時 | ||||
2:テレビを見ている時 | ||||
3:公の場所で座って何もしていない時(例えば劇場や会議) | ||||
4:1時間続けて車に乗せてもらっている時 | ||||
5:状況が許せば、午後横になって休息する時 | ||||
6:座って誰かと話をしている時 | ||||
7:昼食後(お酒を飲まずに)静かに座っている時 | ||||
8:自分が運転をしており、交通渋滞で2~3分止まっている時 |
5点未満では、問題ありません。
11点以上ですとSASが強く疑われますので、受診の際にお知らせください。
SASが疑われると、まずは、「簡易睡眠時無呼吸検査」を行います。
専用の検査機器をお貸出しし、ご自宅で検査を行ってもらい、そちらを基に解析し診断します。
当院で行うことができる検査について
簡易睡眠時無呼吸検査
寝るときに、名刺サイズの小さな機械をおなかに装着ししていただきます。そして、指と鼻にセンサーをつけます。眠っている間の、いびき、お体の向き、息が止まっている長さなどを調べ、睡眠時無呼吸がないかどうか、検査をすることができます。
機械は貸し出しいたしますので、ご自宅の、いつものお部屋、いつものベッドで、いびきや呼吸の状態を調べることができます。
機械をご返却いただいて、当院でデータの解析を行い、
AHI(Apnea Hypopnea Index:無呼吸低呼吸指数)の数値を測定します。
AHI数値 | ~20 | 経過観察またはマウスピース |
20~40 | 精密検査が必要 | |
40~ | すみやかにCPAP療法が必要 |
AHIとは、1時間あたりに起きる無呼吸、低呼吸の回数を示します。AHI20回未満の場合は、ご本人のデータに合わせて、軽い運動療法や睡眠のアドバイスなどを進めつつ、経過を見ていきます。鼻炎や慢性扁桃炎などを合併している方は、耳鼻科や口腔外科にご紹介することもあります。
また、20-40回のグレーゾーンの方は、心電図や、血管年齢などの検査などを並行して行い、睡眠時無呼吸が、お体にどれほど負担をかけているかを確認していきます。動脈硬化の進行が疑われる場合は、早めにCPAPの導入がおすすめですが、そのためにはポリソムノグラフィー(PSG)という精密検査を行って、診断を確定する必要があります。
ポリソムノグラフィー(PSG)精密検査は、睡眠中の脳波、血液中の酸素の量、心電図、空気の流れ、眼やあごの筋肉の動き、胸部や腹部の動きなどを調べられる、SASの最も詳しい検査です。
こちらは専門の医療機関で1泊の入院が必要です。最近は自宅でも受けられる精密検査が開発されてきていますが、検査の質やデータに関しては、入院のほうが、より精度の高い情報を得られます。当院は、現時点では専門の医療機関をご紹介させていただいております。
PSG検査は、夕方に医療機関を受診し、機械を装着し、ひとばん眠って、朝にはお帰りいただけます。寝る前に、頭や体に小さなコードがたくさんつきますので、まるでSF映画で実験されている気分になったとおっしゃる方がおられますが、痛みなどは全くありません。
PSG検査を行い、医師が必要と判断した場合、CPAPによる治療を行います。
睡眠時無呼吸症候群
(いびきの治療)
上気道が閉塞してしまう理由により、治療は異なります。
もっともよく行われているのはCPAP療法(経鼻的持続陽圧呼吸療法)です。
舌が喉の奥に沈んでしまう方や、扁桃が大きいことで閉塞が起きる方は、耳鼻科や口腔外科でマウスピースを制作していただいたり、手術になることもあります。
CPAP療法(経鼻的持続陽圧呼吸療法)とは
寝るときにマスクを装着し、息を吸う時に合わせて少し圧をかけて空気を送り込むことで、上気道が詰まらないようにする治療方法です。副作用が少なく治療効果が高いことが特徴で、装着したその夜から熟眠感と、朝の爽快感を得られる方も多くおられます。
昔に比べて機械はスリムになり、音も小さくなりました。また、マスクも鼻タイプからフルフェイスまで、さまざまなものが開発されています。以前、治療を中断した方も、ご自分に合うものを探してお試しになる価値はあると思います。お気軽にご相談ください。
CPAP治療の条件
簡易睡眠時無呼吸検査でAHI40以上、またはPSG検査でAHI20以上の場合、保険診療で受けることができます。使い方に慣れて、CPAPの装着が習慣化するまでは、毎月受診をおすすめしています。CPAP使用率が安定すれば、ご本人とご相談しながら、1-3か月の間で受診間隔をあけていくことができます。また、オンライン外来での再診も予定しています。
また、いますでにCPAP療法を行っていて、転居などで北千住付近の医院を探している方もお受けいたします。当院でのCPAP通院をご希望の患者様は、まずはお電話でご連絡下さい。今使用されている機械などのご確認をさせていただき、ご転院方法についてご説明させて頂きます。
口腔内装置(マウスピース)
マウスピースで下顎を前方に固定させ、上気道を閉塞しにくくさせます。簡易検査の結果で、AHI10~20の場合、マウスピースによる治療もおすすめしています。歯科・口腔外科をご紹介させていただきます。
手術治療について
扁桃が大きい、鼻中隔が曲がっているなど、上気道が閉塞しやすくなる病気がある場合、耳鼻科での手術をお勧めさせていただくこともあります。
オンライン診療について
当院では、CPAP治療のオンライン受診を今後開始予定です。
対象者は以下の方となります。
- 当院で、対面でのCPAP治療を3回以上行い、使用率も安定している患者さん
- 遠隔モニタリングが可能なCPAP機器を使っている患者さん
- 降圧薬など、ほかのお薬のご処方がない患者さん
詳しくは、来院時にご相談ください。