当院の不眠症・心身症外来に
ついて
●ご注意ください●
当院は内科として、おもに内科疾患にともなう不眠症や睡眠障害のご相談をお受けしています。
精神疾患の診断・治療・診断書の作成はできません。
精神科に受診されている方の、睡眠障害のみの投薬はできません。
ご理解の上、ご予約をお願いいたします。
当院は、総合内科専門医および公認心理師の立場から、不眠症および心身症に対し、医学と心理の両面から診察と治療をさせていただいております。
公認心理師とは、国家資格のひとつで、心理に関する支援を要する方の心理の観察、結果分析、相談、助言、指導などを行います。医学的な標準治療にカウンセリングを併用すると、不眠症や心身症の改善に効果があることが知られています。
内科医として、心理の知識と経験を活用することで、不眠や心身症に悩む患者さんのお役に少しでも立っていければと思っております。
さて、不眠症や心身症は、ご本人の日常生活で、仕事や対人関係などの心理社会的ストレスが長期にわたって続くことが原因で発症したり、悪化したりします。不眠症が日常のストレスから起こるというのは、簡単にイメージがつくと思います。緊張して眠れなかった日が、一日もなかった人など、そういないでしょう。
心身症の代表的なご病気には、過敏性腸症候群、じんましん、片頭痛、緊張性頭痛、機能性ディスペプシア、過換気症候群、自律神経失調症、円形脱毛症などがあります。これらも、ストレスが強いときに起きそうな気がしますね。
そして、高血圧、糖尿病、狭心症、甲状腺機能亢進症、肥満症、睡眠時無呼吸症候群なども、実は心身症のリストに含まれています。
心身症には、「心理社会的ストレスによって発症する」疾患だけではなく、「心理的要因が、身体の病気の回復を遅らせたり、治療をさまたげたり、さらに危険を生じさせたりする」病気も含まれるからです。
ストレスが高くなると、どうしても甘いものや塩分過多なものを取ってしまうため、ストレスが続くと、肥満、糖尿病、高血圧になりやすくなります。これらを改善するためには、甘いものや塩分を控えたり、軽い運動をしたり、よく眠ったりと、生活習慣を改善する必要があります。しかし、心理社会的ストレスが強いと、暴飲暴食がやめられなかったり、むしろストレスで、かえって食べてしまったりします。
いわゆる生活習慣病は、「やめなければいけないと分かっているけれどやめられない」習慣によって、徐々に悪化していきます。そして、最終的には命にかかわる合併症をおこしていくのです。
命を落とすかもしれないのに、「なぜ」やめられないのか。そこに、実は、ご本人も気づいていない心理社会的ストレスがひそんでいることがあります。それにアプローチすることで、生活習慣が驚くほどスムーズに変容することがあります。
内科クリニックの外来では時間的制限があり、カウンセリングを外来で行うことはできません。が、限られた時間の中で心理学的アプローチを併用することで、患者さんが無理なくストレスに気づき、解消することで行動変容が自然と起きたり、お薬を減らしていける、そんな外来を目指しております。
不眠症、心身症(生活習慣病を含む)の方で、治療にお悩みの方は、お気軽にご相談ください。
不眠症とは
不眠症とは、眠りが浅い、熟睡できない、寝てもすぐ目が覚めてしまう、などの理由で、夜に十分な睡眠がとれず、日中にだるさや意欲の低下、集中力の低下、抑うつ、めまいなどが起きてしまい、日常生活のQOLが低下する病気です。
一時期的な不眠は誰にでも起きることであり、自然に改善して再び眠れるようになることが大部分です。しかし、不眠が3か月以上続いてしまうと、「慢性不眠症」とよばれ、治療を受けないと回復しづらいと言われています。
慢性不眠症は成人の約10%に見られ、加齢とともに増加していきます。成人における睡眠薬の服用率は、3-10%で推移しており、こちらも年齢とともに増加していく傾向があります。
不眠症の原因
不眠の原因としてはストレスが一番に上げられますが、身体の病気・こころの病気・薬の副作用などが原因でも生じます。また、アルコール、カフェイン、ニコチンなどの嗜好品、シフトワーク、寝る環境(騒音、気温、ベッドの硬さなど)なども原因となります。
不眠が続くと、布団に入るたびにまた眠れないのではないかと緊張し、さらに不眠が悪化するという悪循環に陥ることもあります。
不眠を引き起こす身体の病気としては、症状がつらかったり、夜に悪化したりするものが多いです。心不全による息苦しさ、肺疾患による咳や痰、糖尿病や前立腺肥大による頻尿、全身のかゆみなどを引き起こすアトピー性皮膚炎などです。また、睡眠時無呼吸症候群やレストレスレッグス症候群(むずむず脚症候群)なども、不眠の原因として有名です。体の病気が原因で起こる不眠は、それぞれの病気をしっかりと治療することで、改善していきます。
躁うつ病、統合失調症、不安神経症などの精神疾患の方は、多くが不眠症を合併します。これらのご病気の方は、かならず精神科で診療を受け、睡眠薬もあわせて処方してもらいましょう。向精神薬や抗うつ薬には不眠の副作用があるものがあり、睡眠薬のさじ加減は、それらの薬の効きを見ながら、同じ医師が行う必要があります。
また、処方薬で不眠の副作用があるものには、降圧薬、甲状腺ホルモン剤、ステロイド薬、抗うつ薬などが挙げられます。気になる方は、医師に相談してみましょう。
不眠症の種類(タイプ)
入眠障害
布団に入っても、眠れるまで30分~1時間以上かかり、日常生活に支障が出る状態です。
もっともよくある不眠で、緊張やストレスで起こりやすいと言われています。
熟眠障害
睡眠時無呼吸症候群・周期性四肢運動障害などが原因になっていることもあり、検査が必要です。
中途覚醒
眠っている間に何度も目が覚めてしまい、一度覚めるとなかなか寝付けない状態です。
加齢により睡眠が浅くなることも一因で、高齢になるほど増加します。ストレスや睡眠覚醒リズムの不調、うつ病、シフトワークなどが原因になることもあります。
早朝覚醒
自分の望む起床時刻より2時間以上早く目覚めてしまう状態をいいます。
生体リズムは加齢により前倒しされていくため、年を取ると、遅くまで起きているのがつらくなり、早寝早起きになっていきます。また、うつ病でも早朝覚醒が起きやすくなります。
不眠症の治療方法
生活習慣の改善
①アルコール、ニコチン、カフェインを避ける
これらの刺激物は入眠を妨げたり、眠りを浅くしたりするため、不眠がある人はまずこれらを減らしてみることから始めましょう。
②日々、同じ時間に寝て、同じ時間に起きる
睡眠は体内時計で管理されています。夜ふかし、朝寝坊、昼寝のしすぎは体内時計を乱すのでやめ、同じ時刻に眠り、同じ時刻に起きることを意識します。昼寝は30分以内におさめます。
③睡眠時間を十分に確保する
睡眠時間そのものを十分確保できていないと、どうしても「早く眠らなければ」と焦りがでてしまいます。時間はまず、十分確保しましょう。そして、眠れなかったらベッドから出ても構いませんし、ベッドの上でのんびり横になっていても構いません。横になっているだけでも体は休まると考えて、リラックスするように心がけましょう。
④太陽の光を浴びる
太陽光には、体内時計を調整する働きがあります。早朝に光を浴びることで、夜眠くなる時間が早くなり、自然と早く寝て早く起きる習慣が作られやすくなります。夜にまぶしい光に当たっていると、眠りを妨げるため、間接照明など、早めに照明を暗くすることも心がけましょう。
⑤適度な運動を定期的に行う
午後のどこかで、軽く汗ばむ程度の運動を行いましょう。ストレッチなども効果的です。軽い有酸素運動を根気強く継続することで、身体がほどよく疲れ、よく眠れるようになります。夜に激しい運動を行うことは控えましょう。交感神経が興奮してますます眠れなくなることがあります。軽い運動のつもりでも、もし目がさえてしまったら、少し負荷を下げるようにしましょう。
⑥寝る前のルーティンを決めましょう
寝る前の音楽や読書など、リラックスしてできるルーティンを持つことは、そのまま良好な眠りに繋がります。湯船への入浴なども効果的です。難しい本を1-2P読むとすぐ眠れるとおっしゃる方もいますので、型にはめず、自分にとって心地よいルーティンを探しましょう。
⑦寝室の環境にはこだわりましょう
ご自分にとって眠りやすい環境をととのえましょう。ベッドの硬さや、布団のあたたかさ・枕、部屋の暗さなどは、人によって好みが異なります。自分にとって気持ちが良いものを選びましょう。部屋の中は、20度くらいの、少し涼しいと感じるくらいがおすすめです。
薬物療法
睡眠薬は、大きく分けて5種類があります。
- ベンゾジアゼピン系睡眠薬
- 非ベンゾジアゼピン系睡眠薬
- メラトニン受容体作動薬
- オレキシン受容体拮抗薬
- その他(抗不安薬、抗精神病薬、抗うつ薬)
また、血中濃度が半分になるまでの時間(半減期)によって4つに分類されます。
- 超短時間作用型:2〜4時間
- 短時間作用型:6〜10時間
- 中間作用型:20〜30時間
- 長時間作用型:30時間以上
睡眠薬は、これらの種類と作用時間を念頭に、患者さんの不眠症のタイプと原因疾患を考慮しながら、ご本人に合ったものを選択していきます。
作用時間が長いものは、翌日の日中まで眠気が続いてしまう「持ち越し効果」があるものがあり、運転などの仕事の方には注意する必要があります。また、薬を飲んだ後の行動を思い出せない「健忘」や、夜中にトイレに立ったときにふらつく「筋弛緩作用」などがあり、慎重に経過を見る必要があります。
カウンセリング
当院は内科のため限られた時間ではありますが、毎回の受診で少しずつ、無理のない範囲でお話をさせていただきます。
心身症とは
心身症とは、さまざまな内科的疾患の中で、心理社会的ストレスがその病気の発症や進行に深く関与し、機能的・器質的な障害を引き起こしている状態です。
こころではなく、お身体に明らかな異常が現れていること、そしてその発症や悪化の原因の一部が、ストレスにあること。その二点があれば、心身症と考えてよいでしょう。
心身症を引き起こす疾患
- 過敏性腸症候群
- 胃・十二指腸潰瘍
- 気管支喘息
- 過換気症候群
- 本態性高血圧
- 不整脈
- 緊張型頭痛
- 片頭痛
- 自律神経失調症
- アトピー性皮膚炎
- じんま疹
- 円形脱毛症
- 月経異常
- ひどい肩こり
心身症の治療について
心身症では、起こってしまった身体的異常に対してまず内科的なアプローチを行い、必要な検査や治療を進めていきます。身体に出た症状に合わせて内服を継続的に行いながら、ストレスの原因になっているものを見直し、生活を修正するなどして、数か月かけて徐々に改善していくケースが見られます。
必要に応じて、漢方薬を併用することにより、より速やかに改善される方も多く見られます。
しかし、身体的な治療をどれだけ行っても、なかなか治療効果が上がらないことも多くあります。原因の大部分が心理社会的ストレスにあり、そのストレス源が解決されていないと、治療していても徐々に悪くなっていくこともあります。
心身症は、うつ病などの精神疾患の初期症状として、症状があらわれていることも多くあります。最初は身体の異常と思ってご来院され、検査をしている間に、徐々に精神的なご症状がはっきりしてくることもあります。
医師が必要があると判断した場合は、説明の上、ご本人の同意を得て、精神科へのご紹介をさせていただくことがあります。精神科の受診をためらう方は多いですが、うつ病などの症状がある方は、きちんと専門の医師に診てもらうことが、早い改善につながります。
心身症を避けるために
心身症は、心理社会的ストレスが原因で発症しますが、ストレスには大きく分けて2種あると言われています。一つは、大地震や、配偶者との死別など、誰もが大きなストレスを感じる状況です。そういった状況下で発症する心身症は自然なことであり、適切な治療と、環境を整えることで改善します。
もう一つは、ストレスに気づきにくいタイプの方です。ご自分の感情や、体感覚に気づくのが苦手なタイプの方は、ストレスで身体に症状が現れても気づくのが遅れ、進行しまってから、自分がストレス下にいたと気づくことがあります。
心身症を避けるためには、普段からご自分のお体と、しっかり対話することが必要です。体は眠いと言っているのに無理して眠らない、疲れているのに疲れていないようにふるまう、痛みがあっても気をそらせば分からなくなってしまう、つらい思いをしてもそれを感じないようにポーカーフェイスで振舞う、などの癖はありませんか。
それは一種の防御反応であり、社会生活の中では、一時期的に必要なこともあります。しかし、それが常習的になってしまうと、心身症を発症する危険因子となります。
ますますのスピード社会と情報社会のなかで、身体の声に耳をかたむけない人はますます増えています。身体が発信する、眠気、疲れ、痛い、などの感覚は自然なものです。それらは、健康を維持するために、今すべきことを教えてくれているだけです。しかし最近では、それらのシグナルが出ること自体を、自身の弱さやマイナスイメージととらえ、シグナルを無視する傾向があるようです。
心身症の発症予防のためにも、まずこの週末、体の声によく耳をかたむけてみませんか。