健康診断の結果をていねいに見ていきましょう
健康診断、受けっぱなしで、そのままにしていませんか?
健康診断は、日々がんばって働いてくれる身体からの手紙です。ひとつひとつ丁寧に見ていくことで、身体が今あなたにしてほしいことに、気づくことができます。
健康診断の結果の
解釈について
健康診断の判定区分は、A-Eの5段階です。(日本人間ドック学会)
A 異常なし
B 軽度異常
C 要再検査・生活改善
D 要精密検査・治療
E 治療中
A:異常なし
その項目において、あなたの数値が、基準値内であることを指します。
基準値とは、20歳から60歳くらいまでの健康な人の検査成績をもとに、対象者の95%を含む範囲(平均±2SD)のことです。この場合、特に問題はありません。
B:軽度以上
わずかに基準範囲を超えていますが、すぐに治療を必要とする状態ではありません。ただ、これまでと同じ生活習慣を続けることで、今後、病気を発症してしまう可能性が出てきています。健康維持のために、生活習慣や食生活の見直しをこの段階から始めるのがおすすめです。
C:要再検査・生活改善
健康維持のために、行動する必要があることを示しています。食生活や運動習慣を改善し、また、指示された期間内に再検査を受ける必要があります。かかりつけの先生がいない場合は、探し始めるとよいでしょう。
*以前、このCは『要経過観察』とよばれていました。上記と同じ意味でしたが、その結果、多くの人が、何もせずに『経過を見て』しまいました。その結果、2022年4月から、『要再検査・生活改善』という、より具体的な表記に変わり、再検査時期なども明記されています。
D:要精密検査・治療
なんらかの病気の発症が疑われます。D判定がが出たときは、すみやかに医療機関を受診してください。もちろん、あくまで『疑い』ですので、異常が見つからない場合や、治療が必要でないこともあります。それでも、1年に1度は、必ず検査を受けるようにしてください。
E:治療中
すでに治療を受けておられる状態です。主治医と相談しながら進めていきましょう。
健康診断の各項目について
健康診断にはさまざまな項目がありますが、それらの数値が基準範囲をを超えると、どのようなリスクがあるのでしょうか。簡単に見ていきます。
血圧
血圧とは、心臓から送り出された血流が血管の内壁を押す力(圧力)のことを言います。
血圧の高さは、心臓が収縮して送り出す血液量、血管の弾力性、末梢血管の抵抗力、血液の粘度などによって決まります。また、腎臓や神経などの働きも影響しています。
血圧が高い状態が続くと、血管にダメージがかかり、血管の壁がだんだん分厚く、固くなっていきます。血管壁は内側に厚みを増すので、管の内側はだんだんと狭く、でこぼこになっていきます。これが動脈硬化です。
動脈硬化を起こした血管では、血液の流れが滞ったり、血栓ができやすくなります。血栓で血管の中が詰まってしまうと、脳梗塞、心筋梗塞などを発症します。
また、血管が傷き弱くなったところが、小さな風船のように膨らんで、動脈瘤を作ることもあります。それがやぶれると、クモ膜下出血を起こすこともあります。
コレステロール
コレステロールは、体内に存在する脂質の一種です。2-3割は体外から、7-8割は体内で合成されます。何かと悪者扱いされていますが、実はからだにとって大切な脂質で、細胞膜やホルモン、胆汁酸を作る材料となります。
HDL(善玉コレステロール)は血管壁にたまったコレステロールを肝臓に運ぶ役割をします。またLDL(悪玉コレステロール)は、肝臓のコレステロールを全身に運ぶ役割をします。どちらも必要なコレステロールですが、LDLがHDLに比べて相対的に過剰になってしまうと、血管壁にコレステロールがたまり、動脈硬化が進行するリスクが高くなります。
血糖値
糖尿病のリスクを調べる検査です。血糖値が高い状態が続くと、血管の内側に微細な傷をつけ、さまざまな合併症を引き起こします。糖尿病の三大合併症である、糖尿病神経障害・糖尿病網膜症・糖尿病腎症は、放置していると足壊疽・失明・腎不全に繋がり、また高血圧や脂質異常症とともに、脳梗塞、心筋梗塞などの発症リスクを高めます。
発症初期には、何年も自覚症状がないため、つい放置しがちですが、この自覚症状がない早期の段階で治療をすることが、合併症の発症予防に何よりも重要です。
メタボリックシンドローム
メタボリックシンドロームとは、内臓脂肪型肥満に加えて、これまで見てきた血圧・血糖・脂質の異常が2つ以上あるときに診断されます。糖尿病・高血圧・肥満・脂質異常症は、『死の四重奏』、『サイレントキラー』として有名ですが(コラム参照)、メタボリックシンドロームは、まさにこの予備軍と言えるでしょう。
腹囲
男性 85㎝以上
女性 90㎝以上
*内臓脂肪面積100㎠以上相当
血糖
血糖 110mg/dL以上
血圧
最高血圧 130mmHg以上
かつ/または 最低血圧 85mmHg以上
脂質
中性脂肪 150mg/dL以上
かつ/または HDLコレステロール 40mg/dL未満
40歳以降で始まる特定健診・特定保健指導とは、まさにこのメタボリックシンドロームに着目した健診です。高血圧・糖尿病・脂質異常症の診断基準をまだ満たさなくても、予備軍になりつつある方を対象に、早めに管理栄養士などが生活習慣を見直すサポートをします。当院の糖尿病チームの医療スタッフは、この特定保健指導の専門でもあります。
尿酸値
尿酸が過剰に産生されるか、尿中への排泄が低下することで、血中濃度が異常に高まってしまう状態です。7㎎以上で高尿酸血症とよばれ、痛風のリスクが高まります。
尿酸が高い状態が続くと、尿酸の結晶が関節内にたまります。このたまった結晶が剥がれ落ちると、白血球がそれを敵とみなして攻撃します。それが痛風発作です。
肥満の方に多いイメージがあり、尿酸が高いと急な運動やダイエットを始める方がいますが、激しい運動はかえって痛風発作を引き起こすことがあるため、注意が必要です。専門家と相談しならが治療を進めることをおすすめしています。
肝機能
AST・ALTは、肝細胞で作られる酵素です。また、γ-GTPは胆管で作られる酵素です。これらの結果から、肝臓、胆のう、胆管の異常を見つけることができます。
AST・ALTが基準よりも高いと、肝炎・脂肪肝・肝硬変・肝がんなどの疑いがあります。γ-GTPが高いと、アルコール性や薬剤性の肝障害や、胆管・胆のうの異常が疑われます。
これらの数値が基準を超えた場合は、早めに消化器内科を受診しましょう。
あわせて、腹部エコーで脂肪肝を指摘された方は、当院でも治療が可能です。脂肪肝を改善すると肝機能の結果も良くなりますので、お気軽にご相談ください。
貧血
赤血球や、ヘモグロビン(Hb)の値が低い場合、貧血がうたがわれます。貧血の原因は、鉄分や葉酸などの不足、消化管の出血など、さまざまな原因があります。まずは内科を受診しましょう。当院でももちろん検査可能です。
尿検査
尿検査では、尿の中に、糖・タンパク・赤血球などが混じっていないか、検査を行います。尿糖が陽性の場合、糖尿病の可能性があります。また、尿蛋白や尿潜血が陽性の場合、尿路感染症・尿路結石・腎機能障害・腫瘍などの疑いがあります。
特に、腎や膀胱の腫瘍は、突然の血尿が出た後、しばらく何事もないため、受診を忘れてしまうことがあります。一度でも、眼で見て分かるような血尿が出たことがあれば、必ず泌尿器科を受診をするようにしてください。
心電図検査
心電図は、不整脈、狭心症、心筋梗塞、心肥大など、さまざまな心臓の状態を教えてくれる大切な検査です。波形の異常がある場合は、循環器内科を受診するようにしましょう。当院では、血管年齢検査やレントゲン検査、心臓エコーなどを合わせて行うことで、かくれた心臓のリスクを発見することができます。気になる方は、ご来院ください。
便潜血陽性
便潜血検査では、便に専用のスティックを挿すことで、便の中に微量の血が混じっているかどうかを調べる検査で、大腸がん検診でも行われます。通常2回行い、1回でも血が混じっていれば、「陽性」と診断されます。その場合は、必ず、大腸内視鏡検査を受ける必要があります。すみやかに、内視鏡検査を行っている消化器内科を受診するようにしましょう。